こんにちは。
今回は、物理学での「力学分野」における「運動の数学的記述」についての話題です。
高校物理では、基本、「微積分を利用しない解き方が主流である」が、微積分を利用すると論理的な議論が進められるので、
これを機にチャレンジしてみよう。。。
まずは、「質点」という聞き慣れない言葉からみていこう。
普段、君たちが生活している際には、どれもこれも、物には「大きさがある」のが普通であろう。
ところが、物事の振る舞いをモデリングするときには、「大きさを考慮すると、考えにくい」ことが
よくある。物理学では、モデリングするとき、極めてシンプルなモデルを設定して考えることがよくある。
「簡単なモデル」から出発して、要素(パラメータ)を少しずつ増やしていきながら、
実際の複雑なモデルへと移行していくのである。
このことから、「物理」では、
「大きさを無視して、全ては一点に集中しているとみなしたものを『質点』」
という。
ただし、高校物理で「鋼体の運動」を考えるときは例外である。というか、たいてい「重心を考える」ことにより解決できる。
「向き」と「方向」のちがいはわかるだろうか。「向き」とは、右向きとか左向きとかいうように「一方向のみ」の量である。
一方、「方向」とは「正反対の量を同時にもつ量で直線的な量」である。
次に、「位置」という言葉を考えよう。「位置」とは「大きさを無視して、ただ一点における座標量」
である。これとよく対比されるのが、「変位」という言葉であり大変重要な用語である。
「変位」とは、どの向きにどれくらい移動したのか、という量で、「向きと大きさ」をもつ量である。
ここで、「向きと大きさ」を同時にもつ量を「ベクトル量」という。それに対して、「大きさのみ」をもつ量を「スカラー量」という。
さらに、「距離」と「道のり」の話をしよう。
「距離」は、初めと終わりだけで決まる量で、「道のり」は、途中経過を考える量である。分かりやすく言えば、「距離」とは、「スタート地点とゴール地点を一直線で結んだ【大きさのみ】」で、
一方の「道のり」は、「くねくねと移動した実際の道筋を考える【大きさと向き】」で考えるという違いがある。
さて、「速さ」と「速度」のちがいは分かるだろうか。「速さ」は、「大きさ」のみの量。「速度」は、どの向きにどのくらい移動したのか、
という「向きと大きさ」を持った「ベクトル量」である。
ここから、いよいよ「運動の数学的記述」の説明に入ろう。
「速さ」とは、「単位時間あたりの移動距離」と定義されるので、
時刻$t(s)$が$t_0$から$t$に変化した時、位置$x(m)$が$x_0$から$x$まで変化したとすると、速さ$v$は、
$$v=\dfrac{x-x_0}{t-t_0} (m/s) \cdots(ア)$$
と定義できる。
$\Delta t=t-t_0$、$\Delta x=x-x_0$とおくと、
$$\Delta v=\dfrac{\Delta x}{\Delta t} (m/s)$$
ここで、$t=t_0$における「瞬間の速さ$V$」を考えて、
$t$を限りなく$t_0$に近づけてみよう。つまり、$t=t_0$における「極限値」を考える。
$$ \lim_{\Delta t\to 0}\Delta v =\lim_{\Delta t\to 0} \frac{\Delta x}{\Delta t}$$
$$dv=\frac{dx}{dt}$$
$$V_{t=t_0}=\frac{dx}{dt}$$
ここで、$t_0$を任意の時刻$t$として、時刻$t$における速さ$v(t)$を考えると、
$$v(t)=\frac{dx}{dt} \cdots(イ)$$
となる。
さらに、時刻$t(s)$が$t_0$から$t$に変化した時、速さ$v(t)$が$v_0$から$v$へ変化したとすると、
$$\Delta v(t)=v-v_0$$
となり、「単位時間あたりの速度変化」を「加速度$a(t)$」という。
$$a(t)=\frac{v-v_0}{t-t_0} (m/s^2) \cdots(ウ)$$
$$a(t)=\frac{\Delta v}{\Delta t} (m/s^2)$$
ここで、$t=t_0$における「瞬間の加速度$B$」を考えて、
$t$を限りなく$t_0$に近づけてみよう。つまり、$t=t_0$における「極限値」を考える。
$$ \lim_{\Delta t\to 0}\Delta a(t) =\lim_{\Delta t\to 0} \frac{\Delta v}{\Delta t}$$
$$d(a(t))=\frac{dv}{dt}$$
$$B_{t=t_0}=\frac{dv}{dt}$$
ここで、$t_0$を任意の時刻$t$として、時刻$t$における速さ$a(t)$を考えると、
$$a(t)=\frac{dv}{dt} \cdots(エ)$$
となる。
(ア)より、
$$x-x_0=v(t-t_0)$$
$$\therefore x=x_0+v(t-t_0) \cdots (オ)$$
(ウ)より、
$$v-v_0=a(t)\cdot(t-t_0)$$
$$v= v_0+a(t)\cdot(t-t_0)$$
$$\therefore v(t)= v_0+a(t)\cdot(t-t_0) \cdots(カ)$$
(イ)より、
$$\int_{0}^{t}v(t)dt = \int_{0}^{t}\frac{dx}{dt}dt$$
左右反転して、
$$\int_{x(0)}^{x(t)}dx =\int_{0}^{t}v(t)dt $$
(カ)を代入して、
$$\int_{x(0)}^{x(t)}dx =\int_{0}^{t}\{v_0+a(t)\cdot(t-t_0)\}dt$$
$$\int_{x(0)}^{x(t)}dx =\int_{0}^{t}v_0 dt + \int_{0}^{t} a(t)\cdot(t-t_0)\}dt \cdots(キ)$$
ここで、「部分積分法」を行って、
$$\int_{0}^{t} a(t)\cdot(t-t_0)\}dt$$
$$=\Big[A(t)\cdot(t-t_0)\Big]_0^t -\int_{0}^{t}\{A(t)\cdot\frac{d}{dt}(t-t_0)\}dt$$
$$=A(t)(t-t_0)-\int_{0}^{t}A(t)dt \cdots(ク)$$
であるので、(キ)より、
$$\Big[x\Big]_{x(0)}^{x(t)} = \Big[ v(0)\cdot t \Big]_0^t+A(t)(t-t_0)-\int_{0}^{t}A(t)dt$$
$$x(t) - x(0) = v(0)\cdot t +A(t)(t-t_0)-\int_{0}^{t}A(t)dt$$
$$x(t) = x(0) + v(0)\cdot t +A(t)(t-t_0)-\int_{0}^{t}A(t)dt \cdots(ケ)$$
となる。
ここで、高校物理の場合には、加速度$a(t)$は一定の値として「等加速度運動を扱う」のが普通なので、
$$a(t)=a (定数) \cdots(コ)$$
として考えれば十分なので、(エ)より、
$$a=\frac{dv}{dt}$$
$$\int_{t_0}^{t}a dt=\int_{t_0}^{t}\frac{dv}{dt}dt$$
$$\Big[at\Big]_{t_0}^{t}=\int_{v(0)}^{v(t)}dv$$
$$at = \Big[v\Big]_{v(0)}^{v(t)}$$
$$at = v(t)-v(0) \cdots(サ)$$
(ケ)に(ケ)を適用すると、
$$A(t)(t-t_0)-\int_{0}^{t}A(t)dt=at\cdot(t-t_0)-\int_{0}^{t}(at) dt$$
$$= at^2-a\cdot t_0 -\Big[\frac{1}{2}at^2\Big]_{0}^{t}$$
$$= at^2 -at\cdot t_0 -\frac{1}{2}at^2$$
$$= -at\cdot t_0 +\frac{1}{2}at^2$$
$$=-\{v(t)-v(0)\}\cdot t_0+\frac{1}{2}at^2 \cdots(シ)$$
(ケ)より、
$$\therefore x(t) = x(0) + v(0)\cdot t -\{v(t)-v(0)\}\cdot t_0+\frac{1}{2}at^2 $$
ここで、通常、時刻は初期状態を時刻0とするので、$t_0=0$として考えて十分なので、
$$\therefore x(t) = x(0) + v(0)\cdot t +\frac{1}{2}at^2 \cdots(ス)$$